戦闘民族の獄

きゅーぽけ所属 モンローです

アロマとデートとワイシャツと私

 大学1年生の6月くらいの話。私は学生寮に住んでいて、1つ上の階の同じ学部であるアロマ(下記ブログ参照)と仲良くなった。

http://monroepoke.hatenablog.com/entry/2017/11/30/213553

 

 アロマは恋多き男で、直ぐに人を好きになるやつだった。どうやら同じクラスの女を好きになってしまったらしい。アプローチをかけてみると、「2人きりでデートは厳しいけど、ダブルデートならいいよ。だからアロマの友人を1人連れてきて」との返事を貰ったらしい。女の方も、同じクラスの友人を連れてくるとのことだった。

 

 そこで白羽の矢が立ったのが私であった。初めて会う好きでもない女と友人のデートのお膳立てをするのが心底嫌だったが、かなり強引に誘われて、結局渋々デートに行く羽目になった。

 

 私は文学部に所属している。文学部は男よりも女の方が多い学部で、煌びやかな女で溢れている。私も彼女が居なかったし、良い機会かもなとも思った。

 

 そんなこんなで苛立ち50・喜び50の心持ちでデートに臨むこととなった。場所は駅に近いAEON(ショッピングモール)私はアロマと共に自転車で向かった。道中に作戦会議をしたが、かなり自信ありげだったので全てを任せることにした。集合時間の10分前に到着した。すると、アロマがにこやかに手を振っており、その先を見ると女が立っていた。

 

 白くて、丸くて、大きい。女はムーミントロールを擬人化したような見た目をしており、店内が涼しかったこともあり「あれ、ここフィンランドだったかな?」と錯覚した。

 

 ムーミンに挨拶を済ませ、アロマとムーミンが楽しそうに話しているのを見ていると、「お待たせ〜」と後ろから女がやって来た。そう、私のデートの相手だ。ワクワクしながら振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そこには秋元康がいた。いや、正確には秋元康にそっくりな女がいた。「前からAKB好きです!」「最近48系列多すぎないすか?笑」など、思うところはいくつもあったが、私はそれらをグッとこらえた。

 

 アロマの誘いを断っておけば良かったと本気で後悔した。よりによって、文学部は文学部でも中央大学文学部中退者が来てしまった。自分の生きる意味をぼんやりと考えていると、ついにダブルデートが始まってしまった。

 

 訳の分からない4人で歩いていると、早速クラスメイトの噂好きの女に出くわしてしまった。終わったと思ったが、もうどうにでもなれとも思った。また、更に先に進むと友人がスターバックスにいたのを見つけた。目が合ってしまったので、私1人で必死に弁解しに行った。

 

 まだデートが始まって数分しか経っていなかったのにも関わらず、心労がかさみまくった。一応雰囲気を壊さないようにと、私は色々と喋ったりもした。

 

 恐らく計画のうちだったのだろう。アロマがヴィレッジヴァンガードでアロマを見たいと言うので、皆で行った。アロマとムーミンが良い感じの雰囲気だったので、私と東京オリンピックパラリンピック組織委員会理事は離れて様子を見守った。

 

 私「アロマたち、めっちゃ良い雰囲気だね」

日本放送作家協会理事長「でも、ムーミン彼氏いるよ」

 

ゑ!?!?!?!?

 

 驚きすぎて思わず昔の人になってしまった。

 

 どうやらムーミンには遠距離恋愛をしている彼氏がいて、その彼氏の「2人きりはダメ」という条件付きで4人で遊ぶことになったそうだ。つまり、デートだと思い込んでいるのは私とアロマだけだったのだ。

 

 当然ながらアロマはまだその事を知らず、楽しそうにムーミンとアロマを嗅いでいた。ますます私のいる意味が分からなくなり、強い憤りを覚えた。

 

 アロマを一通り愛でた彼らは、次の店に行こうとしていた。なにぶん3年も前のことなので、忘れてしまったが、とにかくアロマが次に行こうとしていた店はそもそもAEONには存在していなかった。

 

 アロマはメンタルが弱い。一瞬で計画が瓦解し、さっきまで自信に満ちていた顔はみるみるうちに活力を失っていった。私も、半ば死人のような顔をしていたに違いない。

 

 昼になったのでミスタードーナツに行くことになった。せめてものバイト代を貰わなければあまりに自分が可哀想でいたたまれなかったので、メロンソーダをアロマに奢ってもらった。食欲が無かったのでドーナツは食べなかったが、怪獣たちはよく食べていた。程々に会話を済ませて退店した。もはや盛り上がりは無かった。

 

 それからは、適当に服を見たり、帽子を見たりした。私のバイトの面接の時間が迫っていたため、3人を残して15時あたりでエスケープした。後でアロマに私がいなくなってからどうしたかを訊くと、特にこれといって進展はなく、盛り上がらないまま直ぐに解散したらしい。

 

 まだワンチャンスを掴み取ろうとしていたアロマを見て可哀想になった。残酷かもしれないが、私はムーミンに彼氏がいることを告げた。アロマは驚いた様子で声も出ていなかった。フィンランドの妖精のためなんかにアロマの青春を無駄にさせるわけにはいかない。これで良かったんだ。「新しい恋をしろよ」と背中を押した。

 

 〜それから〜

 アロマはムーミンのことを忘れ、直ぐに新しい相手を好きになった。同時に、「あの時お前にメロンソーダを奢ったのは未だに納得がいっていない」と怒鳴られ、大喧嘩になった。その後あれこれあって仲直りはしたが、現在は私がアロマからUSBメモリを借りパクしており、またアロマの彼女からも本とCDを借りパクしているので気まずくなり会えなくなってしまった。

 

 ちなみにバイトには落ちた。もう二度とダブルデートはしたくない。