春休み
進級ギャンブルに勝利し、辛うじて研究室に入れたため、私は
そんなある日、私はポケサーの先輩方と増田( よく知らないけどポケモン界の偉い人) のサイン会に行くことになった。まずは広い通路に並び、 くじを引く。 当たりが出たら増田のサインを受け取りにパキモンセンター(検索で引っかからないようにここではこのように表記する)に行く というシステムらしい。 どうやら100名がサインを貰えるようだ。倍率は2.5~ 3倍くらいであろうか。私たちは8人で抽選会に赴き、 自分の番を待った。 前に並んでいた4人の先輩が連続で当たりを引いた。 この時点で自分が外れるという予感めいたものがあった。 予感は的中し、見事に私を含む残りの4人は外れた。 外れ賞として、ポストカードを貰った。1人の先輩が「 俺は要らないからサインあげるよ」と気を使ってくれたが、 私は見知らぬおじさんのサインが別段欲しいわけではなかったので (何で来たんだよ)丁重に断った。
当選した先輩達に着いていき、パキセンに到着。 見渡す限り人で埋まっており、店員さんが忙しそうにしていた。 大体の店員さんが可愛く、私はその日何度も恋をした。
配布されていた増田のコダックを受け取り、外れた身の私は、 特にすることもなかったためパキセンの外で皆を待っていた。
偶然にも外で友人を見つけ、久方ぶりの談笑を交わした。彼曰く、 丁度今パキセンで短期バイトの募集があって、 それを受けるらしい。
ポケモンといったら俺だぜ!!!!!
一花咲かせてみせましょ う!
居ても立っても居られなくなり、 後を追うようにして私もエントリーした。
その後帰省をし、貰ったハズレ賞のポストカードが、
暫くして面接日を決めるための電話が掛かってきた。 丁度その着信音で起こされたため極めて無愛想に対応してしまった 。暗雲が立ち込めた。面接で巻き返せばまだいけると思った。
履歴書と予定の分かるスケジュール帳の様なものを持って来いと言 われ、早速履歴書を購入した。 履歴書を書くにあたり証明写真が必要となった。 前のバイト先に履歴書を送った際に撮った証明写真が有るには有る が、私服で撮っているし、 顔が太って見えたので頬を凹ませて写真を撮ったら薬物中毒者みた いな顔になってしまったため、そんな物が使えるわけがない。新たに証明写真を撮ることに決めた。
知っているだろうか?
偶然その事を知っていた私は、意気揚々と自撮りをした。 この写真がバイトに落ちた原因の1つであった事は未だ知る由もな かった。
今後のスケジュールは大学の講義でほぼ決まる。 それ故にどの講義を履修するか決めなければならなかったが、 怠惰が身を打ち面接日当日になっても決めていなかった。 履歴書も時間ギリギリに書いたため、全体的に字が汚く、フリガナを所々振っていなかった。あとちょっと折れた。
私にはパキセンで働いていた知り合いがいたが、 正々堂々と勝負したかったので敢えて面接を受けることを伏せてい た。
念のため自身が最強と自負するシングルのパーティーを組んだ。 勿論対面構築だが、 今回は受けルや害悪にも強い柔軟なパーティーである。
遅刻間の私にしては珍しく、15分前に何とかパキセンに着いた。
5分ほど店内をうろつき、 10分前になるのを待って店員に声を掛けた。 長らく実家に居て殆ど誰とも会話をしていなかったので、 人と話すのは久しぶりだった。
面接のことを告げると、 レジの近くのカウンターの様な所へ案内され、 面接の準備が整うのを待った。
女の店員さん「やっぱ緊張しますよね~笑 頑張って下さい!」
とりあえず恋に落ちた。
甘い恋愛生活を想像しながら、渡されたシフト表を書いた。 平日の予定はまだ分からなかったので代わりとして休日をフルで入 れた。
面接官のような、これまた可愛い店員が来た。増田のサイン会でも見たことのある人だった。他にもスーツを着た人が2人いた。 私を含む4人でパキセンの奥にある部屋に向かった。 この時に気付いた。 この2人も面接を受けに来た者であるということに。
入室すると、既に店長格の男の人が中にいた。 可愛い店員と店員が勝負を仕掛けてきた!
他の2人「よろしくお願いします!!!!!!!」
私「よろしくお願いします~」
声量が明らかに違った。まずいぞ。
3人の履歴書が机の上に並べられた。
写真の色が全然違う!!!!
他の2人は恐らく証明写真機を使用したのだろう。写真が明るい。 私の写真は室内で撮影したため全体的に暗い。怪しくなってきた。
こんな感じ
可愛い面接官が私たちに自己紹介を求めてきた。 他の2人は中々良いことを言っていたが、 聞いたことのないような大学だったため、 幾分かの精神的優位を確保した。 私は少し声を大きめに自己紹介をした。 とにかく暇だからバイトに入れることをアピールした。 子供が好きだというのも最後に付け加えたが、 嘘臭くなってしまった。
「貴方を動物に例えるならなんですか?」
他の奴らは鳥だと答えていた。上から広く見渡すんだとさ。
私はどんなちっぽけな仕事も全力でこなすからライオンだと答えたが、声が震えていた。その姿はちっぽけなネズミのようであった。
他にも幾つか質問をされたが、 店員が可愛かったので見惚れていたところ、 質問を聞き逃してしまった。他の人たちが「初めてです」 と答えていたのを覚えていたため、私も「初めてです!」 と答えた。何が初めてなのかは分からない。
少し空気が変わったので、恐らくは返答に失敗したのだろう。
休日にしていることを訊かれて無限にポケモンをやってることを話 したが、嘘くさくなってしまった。これも本当なのに。
そして遂に最後の質問がやってきた。正直言って、ここで失敗をしなければ合格していた可能性はあった。
面接官「自分の長所と短所を教えてください」
ド定番の質問だが、答えを用意してきていなかった。あろうことか、私から返答をする羽目になってしまった。
「まてよ?これはポケモンのプレイスタイルを答えたら余裕なのでは?」
そう思い、即座に答えた。
「長所は決断力があることです!」
そう、私は選出が非常に早い。これは決断力があるということに繋がる。もうこの頃には他の志望者に引けを取らないくらい声が大きくなっていた。
短所を答えねばと思ったが、良い感じの短所が思いつかない。ポケモンのプレイスタイルで考えた。私はよくノータイムでドヤ読みをして失敗することがある。つまり、短絡的だ。
しかし、それだけを伝えると本当の何の混じりけもない短所をさらけ出すこととなる。「何と言いますか~ う~ん」と5秒間ほど時間を稼いだが、何も思いつかなかった。そろそろ限界だと感じ、「ここは正直に言った方が株が上がるやろ!」理論で「短所は短絡的なことです!」と言い放った。
これを言った瞬間に思ったが、5秒間も短所について何を言おうか迷っていた時点で「決断力」がないので、「短絡的」だから嘘の長所を言ったとみなされてしまったのではないか。
当然バイトに落ちてしまった。
恥ずかしくて落ちて以来一度もパキセンには行っていない。
その1週間後に自転車を盗まれ、私の人生は幕を閉じた。